F:前任者の存在が余りに大きいと、後継する人は大変ですよね。全てのことが比較されて、「前の人は良かった……」と大抵は言われてしまう。少しでも悪くなればクソミソだし、同等でも悪く言われることの方が多い。ある意味立派過ぎるパパの2代目経営者みたいなもので。
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水:だけど次の人が賢かったら、俺と違うことをやる。同じことをやるから比較されるんだ。違うことをやれば比較されない。答えは簡単。俺と違うことをやったら、俺のできなかったことをやってくれたということになる。
物事って考えれば簡単なんです。だから、俺と同じことをやろうとしちゃいけないの。実際に俺自身が、レースの世界に入った時にもそうしてきた。自分に言い聞かせて真似事は避けてきた。俺はレースをやる前は日産の乗用車を設計する人間だったわけで、それがあるとき突然レースをやれ、と言われた。
全く知りもしないレースの世界に放り込まれて、突然監督をしろと言われたらまず何をするか。普通の人ならまずノバ(ノバエンジニアリングというレーシングカーコンストラクターの会社のことです)へでも行って……ノバは当時10年間連続でチャンピオンを取っていたから……クルマを見せてもらって、レースとは何ぞやと講義を受けるでしょう。
でも俺は絶対にやらない。それをやった瞬間にノバの後ろに着く2位にしかなれないからだ。まずノバにやれないことを一生懸命考える。俺はそうしてやってきた。
F:まずは良い先生につく。基本的で正しい方法だと思います。
前任者を越えていくには
水:ノバはグループCレースが始まって10年間チャンピオンを1回も放したことがない文字通りのチャンピオンです。そこに行くのはヤマグチさんの言うとおり「基本的だし正しい」のかも知れない。だけどそれはあくまでも“普通”ね。俺は絶対に聞きに行かなかった。普通にやったって勝てっこないからです。
ノバにできない、ノバがまだやっていないことを一生懸命考えてやらなきゃ勝てないんだ。自分で一生懸命考えて、悩んで悩んで、工夫して工夫して、それでその年からチャンピオンになった。
物事ってそう考えないといけない。だから俺の後任者も俺と同じことをやろうとしちゃだめなんです。やったら絶対に追いつけない。比較されるだけ。僕ができなかったことをやればいい。そこに新しいGT-Rがきっとあるんです。そこに価値観があるんです。絶対に。亡霊は追いかけちゃだめなんだ。