典型的な対立は、「消費者が食品に対してゼロリスクを求める」という専門家の主張とそれに対する消費者の反発である。もちろん、ゼロリスクを達成することは不可能であるから、このように主張されるとき、消費者が感情的であるとか非科学的であるというようなことが問題として意識されていることになる。しかし、人々がゼロリスクを求めているというのは専門家の謝ったステレオタイプにすぎないことは、リスク・コミュニケーション研究の初期にすでに指摘されているところである(Otway & Wynee, 1989)。
このような対立を抱えたままでは、せっかくリスク分析の仕組みを整備し、それを実現したとしても一般市民の理解を得ることは難しい。コミュニケーションの視点から見ても、すでにFlynn et al.(1993)が、「人々は問題を理解しない」とか「科学的保証を与えるべき」という信念に基づいたキャンペーンは効果がないことを指摘している。彼らによればリスク・コミュニケーションは人々の価値(心理的、社会的、文化的、道徳的)に配慮することが重要であって、科学的合理性はこの代替にはならない。また、Lomax(2000)も、価値の対立は研究の進展や専門家の合意では解決できず、コミュニケーションと信頼をもとにした参加的なアプローチが必要であると述べている。
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芳川・矢守・杉浦著「クロスロード・ネクスト 続:ゲームで学ぶリスク・コミュニケーション」ナカニシヤ出版、2009年。 ついでに挙がってる文献へのリンクも。 |
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